Bluetoothの名前、誰が決める
Gusha「Bluetoothって、見えないくせに名前だけはめちゃくちゃ自己主張してくるよな」
Kenja「Bluetooth自体に名前があるわけじゃない。接続する機器の名前だ」
Gusha「じゃあ、あれ全部名札か」
Kenja「まあ、そう考えてもいい」
Gusha「じゃあ俺、今日から『俺です』にする」
Kenja「何の名前を?」
Gusha「スマホ」
Kenja「一番困るやつだな」
Gusha「だって一覧に『俺です』って出たら、俺だって分かるじゃん」
Kenja「周りの人には分からないだろ」
Gusha「でも俺には分かる」
Kenja「自分のスマホを自分で識別するためだけに、世界中に『俺です』と発信するな」
Gusha「でも機械の名前って、意外と人格出るぞ。昨日レンタカー借りたら、車のBluetooth一覧に『iPhone』『iPhone(2)』『Kenja』って並んでた」
Kenja「俺の名前が出てたのか」
Gusha「そう。だから車の中にKenjaが三人いるみたいだった」
Kenja「『iPhone(2)』は俺じゃない」
Gusha「じゃあ誰だよ」
Kenja「知らない人だ」
Gusha「怖いな。知らないKenjaが車内にいる」
Kenja「Bluetoothの機器名を人格扱いするな」
Gusha「でもさ、名前を変えられるなら、みんな何か考えてるだろ」
Kenja「人による。初期設定のまま使う人も多い」
Gusha「それは表札を『家』にしてるようなもんだろ」
Kenja「表札とは違う」
Gusha「『iPhone』って、名乗ってるようで何も名乗ってないからな」
Kenja「AppleのiPhoneだということは分かる」
Gusha「俺なら『たぶん俺の』にする」
Kenja「所有者が不安なんだな」
Gusha「『たぶん俺の(充電少なめ)』でもいい」
Kenja「情報を盛るな」
Gusha「『絶対俺の』は?」
Kenja「強いな」
Gusha「『俺じゃない可能性あり』」
Kenja「弱いな」
Gusha「『昨日まで元気でした』」
Kenja「故障報告になる」

Kenja「ただ、機器名って、他人から見られることもあるんだぞ」
Gusha「そうなの?」
Kenja「例えばBluetoothの一覧に表示されれば、近くの人が名前を見る可能性はある」
Gusha「じゃあ『昨日の俺、反省中』とかにしたら?」
Kenja「知らない人にまで事情説明するな」
Gusha「『今から接続します』」
Kenja「実況するな」
Gusha「『接続されたら嬉しいです』」
Kenja「感情を持たせるな」
Gusha「でも、そう考えると機械って不思議だな。買ったときはただのスマホなのに、名前を変えた瞬間、ちょっと自分のものになる」
Kenja「それは分かる。名前を付けることで区別しやすくなるからな」
Gusha「じゃあKenjaのスマホ、今なんて名前?」
Kenja「……」
Gusha「『Kenjaのスマホ』?」
Kenja「初期設定のままだ」
Gusha「iPhone?」
Kenja「そう」
Gusha「ほらな」
Kenja「何が?」
Gusha「俺たち、名前を付ける側だと思ってたけど、結局『iPhone』に戻ってくる」
Kenja「別に戻ってはいない」
Gusha「じゃあ今日だけ変えようぜ」
Kenja「何に?」
Gusha「『Kenjaのスマホ(たぶん俺の)』」
Kenja「……それなら少し分かりやすいかもしれない」
Gusha「ほら、もう名前に人格が出てる」
Kenja「いや、出てるのは不安だけだ」
Gusha「不安にも名前を付けられる時代なんだな」
Kenja「Bluetoothにそこまで背負わせるな」
Gusha「じゃあ、俺のスマホは『俺です』で」
Kenja「それだけはやめろ」
Gusha「……『俺かもしれません』」
Kenja「それ、もう誰のスマホか分からないだろ」
名前をつけたら、少し他人になる シリーズ
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