読んでない本ほど、なんか偉そうに並ぶ
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Gusha「この前さ、電子書籍で積読してる数見たら、六百冊超えてた」
Kenja「それもう“積読”っていうか、図書館の倉庫なんだよ」
Gusha「でも部屋スッキリしてるぜ? 紙だったら床抜けてる」
Kenja「六百冊分の“読んでない安心感”だけクラウドに保存されてるんだな」
Gusha「いや、安心感なんだよ。夜中に急に“ロシア文学読みたい”ってなっても、三秒で出せる」
Kenja「そんな衝動、年に一回も来ないだろ」
Gusha「来た時に強いんだよ。あと電子書籍って、“今すぐ読める”のが怖い。買うまでの冷静さがない」
Kenja「ああ、それはちょっと分かる。紙の本って、一回レジ通す時間あるからね」
Gusha「電子だと、布団の中で“ポチッ”…で終わり。翌朝知らん本が増えてる」
Kenja「酔った勢いの通販みたいに言うな」
Gusha「しかもさ、電子書籍って本棚見えないじゃん。だから無限に増えるんだよ」
Kenja「物理限界がないからな」
Gusha「紙の本は、“あ、もう置く場所ない”って現実が殴ってくる」
Kenja「本棚は意外と人格矯正してるんだな」
Gusha「俺、一回だけ紙の本いいなって思ったことある」
Kenja「珍しいね。何読んだの?」
Gusha「読んでない」
Kenja「読んでないのかよ」
Gusha「古本屋でさ、ちょっと焼けた文庫本開いたら、変なシミと、昔の電車の切符挟まってて」
Kenja「ああ…たまにあるね」
Gusha「なんか、“前の持ち主、生きてたんだな”って感じして」
Kenja「ちょっと分かる」
Gusha「電子書籍って綺麗すぎるんだよ。昨日買った本も十年前の本も、同じ顔して出てくる」
Kenja「データだから劣化しないしね」
Gusha「でも紙の本って、“時間食ってる顔”してるじゃん。角が丸くなってたり」
Kenja「それを味って呼ぶ人は多い」
Gusha「俺あれ、最初“汚れ”だと思ってた」
Kenja「まあ実際、汚れでもある」
Gusha「でもさ、不思議なんだよ。綺麗な新品より、ちょっとヨレた本の方が“読まれてる感”ある」
Kenja「人の痕跡を感じるんだろうね」

Gusha「あと紙の本って、読んだ場所まで残るんだよな」
Kenja「場所?」
Gusha「このシミ、絶対カレーうどんの日だ、とか」
Kenja「最悪のしおりだな」
Gusha「電子書籍は全部同じ画面だから、“どこで読んだか”薄いんだよ」
Kenja「なるほど…。確かに、紙の本は旅行先とか季節ごとで記憶と結びつく時あるかも」
Gusha「だろ? だから俺、最近ちょっと分かんなくなってきた」
Kenja「何が?」
Gusha「読むだけなら電子の方がラクなのに、“持ってたい”のは紙だったりする」
Kenja「結局そこなんだよな。本って情報だけじゃないっていう」
Gusha「でも紙の本、邪魔なんだよ」
Kenja「急に現実に戻るな」
Gusha「この前、本棚の奥から昔買った哲学書出てきてさ」
Kenja「お、読んだ?」
Gusha「開いたら、一ページ目で寝た形跡だけ残ってた」
Kenja「どういう形跡?」
Gusha「よだれ」
Kenja「最低の読書ログだな」
Gusha「でも、そのシミ見た瞬間、“あーこの時期こんな感じだったな”って思い出したんだよ」
Kenja「……」
Gusha「電子書籍って便利なんだけど、“生活の跡”は残りにくいのかもな」
Kenja「いや、でも電子には電子の良さあるよ。検索もできるし、どこでも読めるし」
Gusha「お前また中立戻ったな」
Kenja「戻るよ。戻るけど…」
Gusha「けど?」
Kenja「この前、電子版持ってる小説、わざわざ紙でも買った」
Gusha「あら?」
Kenja「いや、なんか…本棚にあると安心するんだよ」
Gusha「それもう“読む”じゃなくて、“住ませてる”じゃん」
Kenja「……否定できない」
Gusha「紙の本って、たまに家具とペットの間みたいになるよな」
Kenja「その例えは雑だけど、ちょっと分かる」
暮らしの思い込み シリーズ
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