付箋は、読むためより忘れないために増えていく
Gusha「付箋って、本より増えるよね」
Kenja「いや、本よりは増えないよ」
Gusha「俺の家では増えてる。読んでる本より、貼ってある付箋の束の方が分厚い」
Kenja「それは貼る前の付箋も数えてるでしょ」
Gusha「だって貼る予定なんだから、実質貼ってるようなもんだろ」
Kenja「その理屈でいくと、まだ食べてないお菓子も満腹になる」
Gusha「ならないな。それは昨日確認した」
Kenja「確認したんだ」
Gusha「でもさ、黄色とかピンクの付箋を貼ると『ちゃんと読んでる人』になった気がする」
Kenja「気持ちは分かる。でも付箋は勲章じゃないよ」
Gusha「じゃあ何なんだ」
Kenja「忘れても大丈夫にする道具かな」
Gusha「覚えるためじゃなくて?」
Kenja「その逆に近い。『ここ大事だから、あとで戻ればいい』と思えるから、その場では無理に覚えなくて済む」
Gusha「なるほど。俺、未来の俺に丸投げしてたのか」
Kenja「未来の自分は意外と忙しいけどね」
Gusha「確かに一回も呼び出しに応じてくれない」
Kenja「付箋を貼ったページを開かないまま本棚に戻ることも多いからね」
Gusha「付箋って、読書のしおりじゃなくて安心剤だったのか」
Kenja「実際、3Mが現在の形の『Post-it』を発売したのは1980年。『きれいにはがせる』ことが価値だった」
Gusha「貼ることより、はがせること?」
Kenja「そう。書き込みみたいに決定じゃない。『あとで変えてもいい』という余白がある」
Gusha「付箋って、ずいぶん優しい性格してるな」
Kenja「だから増えるんだと思う。決断じゃなくて保留だから」
Gusha「俺の本、保留だらけだ」
Kenja「人生まで貼らなくていいからね」
Gusha「でも、一枚だけ貼ってある本って、なんか信用しちゃうんだよな」
Kenja「全部に貼るより、その一枚が本当に引っかかった場所なんだろうね」
Gusha「今度から貼る前に一回考えてみる」
Kenja「それでも貼る枚数は、たぶんあまり減らないと思う」
Gusha「うん。だって付箋、家にまだ六冊分くらいある」
Kenja「冊じゃなくて束で数えてほしい」

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