レシピは最後まで読まなくてもいい
Gusha「レシピって、最初から最後まで読む人は料理に疑われてると思う」
Kenja「料理じゃなくて、あなたが料理に疑われてるんだと思う」
Gusha「だって、カレー作るのに『玉ねぎをみじん切りにします』って書いてある時点で、もう包丁持ってるじゃん。その先は鍋が教えてくれる」
Kenja「鍋は教えてくれない。焦げるだけだ」
Gusha「でもさ、料理してる途中って、レシピ見なくなる瞬間あるよね」
Kenja「それはある。最初は画面を見ていても、途中からは手が勝手に動くことはある」
Gusha「ほら。レシピって、最後まで読む本じゃなくて、最初だけ押してくれるボタンなんだよ」
Kenja「ずいぶん乱暴な説明だけど、言いたいことは分かる」

Gusha「この前も、スマホでレシピ開いてたのに、途中から画面が消えたんだ」
Kenja「一定時間操作しないと消えるからね」
Gusha「そのまま最後まで完成した」
Kenja「それは料理を覚えていたからだ」
Gusha「違う。スマホが『もう大丈夫』って帰ったんだ」
Kenja「スマホに自主退勤の制度はない」
Gusha「でも、あいつ満足そうだった」
Kenja「どこを見てそう思ったんだ」
Gusha「黒い画面」
Kenja「ただのスリープだ」
Gusha「しかも完成したカレーは普通においしかった」
Kenja「料理って、途中からは匂いや音や見た目で判断する部分があるからね」
Gusha「ジュワーって音とか」
Kenja「そう。炒める音が変わったり、とろみが出たり」
Gusha「レシピには書いてない先生が、台所にはいっぱいいるんだ」
Kenja「それは少し面白い表現だな」
Gusha「だから料理が上手い人って、レシピを暗記してるんじゃなくて、先生が増えてる人なんだ」
Kenja「経験で判断材料が増えていくという意味なら、その通りかもしれない」
Gusha「だから俺、この前『塩 少々』を完全に先生へ任せた」
Kenja「結果は?」
Gusha「先生が寝てた」
Kenja「ただ入れすぎただけだ」
Gusha「しょっぱかった」
Kenja「そこだけはレシピを見直してほしかった」
Gusha「でもさ、『少々』って数字じゃないじゃん」
Kenja「日本のレシピでは昔からよく使われる表現だね。農林水産省の料理紹介でも、『少々』『適量』は普通に出てくるし、2022年に出版された料理本でも珍しくない」
Gusha「結局、人間に任せる場所が残ってるんだ」
Kenja「全部を数字で決めないから、自分の台所になっていく部分はある」
Gusha「料理って、説明書じゃなくて会話なんだな」
Kenja「そこまで言うと大げさだけど、一回作った料理は、二回目から少しだけ自分の料理になる」
Gusha「じゃあ今日もレシピは最初だけ見よう」
Kenja「最後に分量だけは見てくれ」
Gusha「先生を信用したい」
Kenja「先生が寝ている日は、スマホを起こしたほうが早い」
それで十分だった シリーズ
- 申し訳なくなるくらい、うまい
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