The moment you look at the recipe is when you are most truly cooking.

レシピを見た瞬間が、いちばん料理している

Gusha「レシピって、保存した瞬間に一回完成するよね」

Kenja「料理じゃなくて、気持ちが完成してるだけだ」

Gusha「だから冷蔵庫の中身を見なくても安心できる」

Kenja「安心する理由が危ないな。それ、何も作れてない」

Gusha「でもさ、スマホの保存フォルダに『絶対作る』っていうアルバムがあると、料理が得意な人っぽくならない?」

Kenja「ぽくはなる。でも夕飯は出てこない」

Gusha「不思議なんだよ。動画を最後まで見て、保存まで押すと『今日は頑張った』って気分になる」

Kenja「脳の中では準備が進んだ感覚になるんだろうな。でも実際にはフライパンすら出てない」

Gusha「料理って、火をつける前が一番疲れるんだよ」

Kenja「それは少し分かる。献立を決めて、材料を確認して、足りないものを考えて。その段階で仕事を一つ終えた気になる」

Gusha「だから保存ボタンは電子レンジみたいなものなんだ」

Kenja「温まってない」

Gusha「え?」

Kenja「何も温まってない」

Gusha「じゃあ冷蔵庫か」

Kenja「それも違う」

Gusha「スマホって難しいな」

Kenja「そこじゃない」

A smartphone with cooking videos saved and a closed cookbook in the kitchen

Gusha「でも紙の料理本って、保存しなくても捨てないよね」

Kenja「一冊の中に流れがあるからだと思う。今日は親子丼でも、隣のページで味噌汁を見つけたりする」

Gusha「ネットは一品だけ飛んでくる」

Kenja「そう。便利だから目的には早く着く。でも寄り道は減る」

Gusha「だから料理本を開くと、予定外のページで止まるのか」

Kenja「たとえば1983年発売の『オレンジページ』の古い号を眺めると、料理だけじゃなく当時の台所や道具まで見えてくる。情報というより、一冊の空気が残っている」

Gusha「レシピというより散歩だ」

Kenja「そういう読み方もできる」

Gusha「じゃあ保存フォルダも散歩できる?」

Kenja「できるけど、同じパスタが十五個並んでる散歩はあまり楽しくない」

Gusha「それ俺だ」

Kenja「少し笑った。でも、多くの人がそうだと思う」

Gusha「結局、一番作ったレシピって保存したやつじゃなくて、何度も開き直したやつなんだよな」

Kenja「そこは大事だ。一回だけ保存したものより、何度も検索し直したもののほうが暮らしに残る」

Gusha「保存って約束で、作るって実行なんだ」

Kenja「その間には意外と距離がある」

Gusha「今日帰ったら保存フォルダ整理する」

Kenja「整理だけで満足しないように」

Gusha「じゃあ一品だけ作る」

Kenja「その一品のほうが、新しい保存先を探すよりずっと役に立つ気がする」

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