セルフレジだけ、急に性格診断してくる
Kenja「今日スーパーでセルフレジ使ってたら、前の人がものすごく慌ててた」
Gusha「わかる。セルフレジって急に人間性を試験してくるもん」
Kenja「試験じゃない。会計してるだけだ」
Gusha「違う違う。最初は普通なの。『ピッ』って優しいの。でも途中から『ほら、次は?』『まだ?』って圧を出してくる」
Kenja「機械は何も言ってない」
Gusha「言葉じゃないの。空気」
Kenja「空気を出すセルフレジは聞いたことがない」
Gusha「後ろに三人並んだ瞬間、画面が急に大きく見えるんだよ」
Kenja「それは自分が焦ってるだけだ」
Gusha「バーコード探す能力まで落ちるし」
Kenja「それはある」
Gusha「普段なら一秒で見つかるのに、牛乳を三周くらい回す」
Kenja「底かな、横かなって探すよな」
Gusha「パンなんか袋が全部同じだから、ずっと回してる」
Kenja「まるで鑑賞してる人だ」
Gusha「『このパン、どこから見てもパンですねえ』」
Kenja「美術館じゃない」
Gusha「やっと見つけて『ピッ』ってやったら、今度は袋詰めゾーンが待ってる」
Kenja「そこから第二ステージだ」
Gusha「第二形態」
Kenja「ゲームのボスじゃない」
Gusha「重いものから入れろとか、卵は最後とか、頭では知ってる」
Kenja「基本だな」
Gusha「でも後ろに人がいると全部忘れる」
Kenja「急に判断力が消える」
Gusha「豆腐の上にキャベツ置いたことある」
Kenja「ひどい」
Gusha「家で見たら豆腐が平面になってた」
Kenja「新しい食品を開発するな」
Gusha「しかもセルフレジって『袋をお取りください』とか言うじゃん」
Kenja「音声案内だな」
Gusha「『はい!』って返事したことある」
Kenja「返事する人いるのか」
Gusha「だって話しかけられたし」
Kenja「話しかけられてはいない」
Gusha「『商品を袋詰めエリアに置いてください』」
Kenja「うん」
Gusha「『はい!』」
Kenja「素直だな」
Gusha「『予期しない商品があります』」
Kenja「あるある」
Gusha「こっちも『予期してません!』ってなる」
Kenja「そこは一致してる」

Gusha「一番怖いのは店員さんが飛んでくる瞬間」
Kenja「エラー対応な」
Gusha「あの人たち速すぎる」
Kenja「すぐ来てくれるのは助かる」
Gusha「どこで見てるの?」
Kenja「ランプが点灯するから」
Gusha「忍者かと思ってた」
Kenja「スーパー専属忍者は人件費が高い」
Gusha「『セルフレジの術!』」
Kenja「術の内容が接客だ」
Gusha「店員さん来て、画面を二回くらい押したら終わるじゃん」
Kenja「だいたいそれ」
Gusha「私は十分悩んだのに」
Kenja「経験値の差だ」
Gusha「ゲームならレベル99だよ」
Kenja「セルフレジマスターか」
Gusha「たぶん家でもセルフレジしてる」
Kenja「どういう生活だ」
Gusha「冷蔵庫開けるたびに『ピッ』」
Kenja「会計され続ける人生」
Gusha「牛乳一本二百十八円」
Kenja「妙に現実的な価格だな」
Gusha「『ありがとうございました』」
Kenja「飲むたび支払いか」
Gusha「高級な毎日になる」
Kenja「財布が先に空になる」
Gusha「でも不思議なんだよ」
Kenja「何が?」
Gusha「有人レジだと、店員さんが全部きれいに並べてくれるじゃん」
Kenja「慣れてるからな」
Gusha「セルフレジになると急に『自分ってこんなに不器用だったっけ』って思う」
Kenja「普段は誰かが自然にやってくれてた部分を、自分で全部やるからだろうな」
Gusha「バーコード探して、向きを変えて、袋開いて、財布出して」
Kenja「最近はキャッシュレスも増えたけど、一連の流れは全部自分だ」
Gusha「人生の縮図みたい」
Kenja「そこまで大きい話か?」
Gusha「誰も見てないと思ったら見られてるし、急ぐと失敗するし」
Kenja「少しは当たってる」
Gusha「だからセルフレジって会計じゃなくて」
Kenja「うん」
Gusha「五分間だけ、自分を操作するゲームなんだよ」
Kenja「クリア条件は買い物を終えることか」
Gusha「たまにラスボスが長ねぎ」
Kenja「袋から飛び出すからな」
Gusha「長ねぎだけ最後まで反抗してる」
Kenja「確かに、あいつだけは毎回袋の外を見てるな」
Gusha「帰り道まで『今日はこれ買いました』って自己紹介してる」
Kenja「長ねぎだけは隠れる気がない」
Gusha「たぶん長ねぎは、セルフレジにも全然緊張してないんだろうね」
Kenja「そういう人が、一番早く会計を終えるのかもしれないな」