傘立てが、なぜか毎回満員
Gusha「聞いてくれよKenja、うちの傘、また増えてた」
Kenja「増えてたって、傘が勝手に増殖するわけないだろう。買ったんじゃないのか」
Gusha「買ってないんだよ、それがさ。気づいたら5本もあった。しかも1本もまともに開かない」
Kenja「それはただの見て見ぬふりの結果だと思うけど」
Gusha「違うんだって。飲み会で急に降られて、その場しのぎで買う。あれの積み重ね」
Kenja「なるほど、突発的な出費の集合体か。合理的とは言い難いね」

Gusha「でもさ、その中に1本だけ、なぜか手放せないやつがいるんだよ」
Kenja「手放せない傘?機能はどれも大差ないだろう?風に強いとか、軽いとか、そういう違いならまだ分かるけど」
Gusha「違う。あれは、駅前で拾ったやつなんだよ。誰かの忘れ物」
Kenja「それは君のものじゃなくて、落とし物では」
Gusha「もう3年経ってる。今はもう俺の傘」
Kenja「時効を主張するにしても、傘に時効の概念はないと思うけど」
Gusha「でもそいつだけ、なぜか毎回ちゃんと開くんだよ。折りたたみなのに、骨も折れてない」
Kenja「単に品質がよかっただけの話じゃないか」
Gusha「品質の話じゃないんだって。愛着だよ、愛着」
Kenja「傘に対する愛着?」

Gusha「Kenjaだって、あるだろ。なぜか手放せないやつ」
Kenja「僕は傘くらい、機能で選ぶよ。デザインにも構造にもこだわりはない」
Gusha「じゃあ聞くけど、今使ってる傘、いつ買ったか覚えてる?」
Kenja「……」
Kenja「思い出せないな」
Gusha「ほら、覚えてないってことは、それなりに長く使ってるってことだろ」
Kenja「それは単に記憶力の問題であって……いや、待てよ。確かに、何度か買い替えようと思って、結局買い替えてないな」
Gusha「それだよ、それ。壊れてもないのに、なぜか手が伸びる」
Kenja「機能的には十分だから、買い替える理由がないだけだと思うけど」
Gusha「理由なんて後付けだって。本当は、情がわいてるだけ」
Kenja「傘に情が湧くという表現には、少し違和感があるけど」
Gusha「でも、ちょっとは分かるだろ?」
Kenja「……分からなくはない、気もする……ただ、傘立てが満員になる現象を肯定はしないからね」
Gusha「それでいいんだよ。傘立てはいつも渋滞気味くらいがちょうどいい」
気づいたら、増えてる シリーズ
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