The search bar remembers my past better than I do.

検索欄、俺より俺の過去を覚えてる

Gusha「検索欄って、俺より俺の過去を覚えてるよな」

Kenja「検索履歴のことか? まあ、過去に検索した言葉は残ることがあるな」

Gusha「昨日の俺が何を調べたか、今日の俺が知らないんだぞ」

Kenja「自分で調べたんだから知ってるだろ」

Gusha「いや、昨日の俺と今日の俺は、もう別人だよ」

Kenja「一晩で人格を分けるな」

Gusha「スマホ開いて検索しようとしたら、『冷凍うどん おいしい食べ方』って出てきた」

Kenja「昨日調べたんだろ」

Gusha「覚えてない」

Kenja「食べたんじゃないのか?」

Gusha「たぶん食べた。でも、そこまで覚えてない」

Kenja「うどんを食べた記憶まで検索履歴に負けるなよ」

Gusha「しかも、その下に『電子レンジ 卵』って出てきた」

Kenja「それもお前だろ」

Gusha「俺、昨日かなり台所にいたんだな」

Kenja「履歴から生活を推理するな」

Gusha「さらに『ラップ 電子レンジ 爆発』」

Kenja「何をしてたんだよ」

Gusha「そこから先は、俺も知りたくない」

Kenja「お前自身の履歴だろ」

Gusha「でも検索欄って怖いぞ。何も入力してないのに、過去を勝手に出してくる」

Kenja「便利だから候補として出してるだけだろ」

Gusha「『お前、これ前にも気になってたよな』って言われてる感じがする」

Kenja「検索欄に記憶力のある友達みたいな役割を持たせるな」

Gusha「友達ならまだいい。検索欄は何も言わないから怖いんだよ」

Kenja「ただ文字が出てるだけだ」

Gusha「その無言の感じが、『説明は要らないよな?』って顔してる」

Kenja「検索欄に顔はない」

Gusha「でも候補が出る順番にも、なんか意味がありそうじゃん」

Kenja「最近使ったものが出るとか、仕組みはいろいろあるだろ」

Gusha「じゃあ上から順番に、俺の人生の重要度ってこと?」

Kenja「違う」

Gusha「一番上が『今日の夕飯』で、その下が『昔のアニメ 最終回』だったら?」

Kenja「夕飯のほうが最近検索しただけだろ」

Gusha「でも俺の中では、昔のアニメの最終回のほうが重い」

Kenja「検索履歴に人生の順位を決めさせるな」

In the living room of a home, a woman holds her smartphone with both hands, gazing at the search screen without having typed anything into the input field yet; she peers at the screen with a slightly puzzled expression, while a man beside her looks calmly at the smartphone with his arms crossed.

Kenja「そもそも、検索履歴が残るのが嫌なら消せばいいだろ」

Gusha「消したら、昨日の俺が何を調べたか分からなくなるじゃん」

Kenja「分からなくていいだろ」

Gusha「いや、たまに役に立つ」

Kenja「例えば?」

Gusha「『あれ、前に調べた店どこだっけ』ってなったとき」

Kenja「それは確かに便利だな」

Gusha「だから消したくない。でも、見られると恥ずかしい」

Kenja「何を調べたら恥ずかしいんだよ」

Gusha「『冷蔵庫 変な音 夜中』」

Kenja「普通に困ってたんだろ」

Gusha「『眠れない 羊 何匹』」

Kenja「それはちょっと古いな」

Gusha「『羊 数える 意味』」

Kenja「途中で疑問を持つなよ」

Gusha「あと『透明人間 服どうする』」

Kenja「急に小学生みたいになるな」

Gusha「検索って、思いついた瞬間は本気なんだよ」

Kenja「まあ、それは分かる」

Gusha「でも翌朝見ると、『なんで俺、これを調べたんだ』ってなる」

Kenja「その意味では、検索履歴って過去の自分から届くメモみたいなものかもしれないな」

Gusha「じゃあ俺、昨日の俺からいっぱいメモもらってるんだ」

Kenja「そういうことになるな」

Gusha「でも内容が『卵 電子レンジ 爆発』なんだよな」

Kenja「メモというより注意書きだな」

Gusha「しかも、たぶん俺が自分で書いた」

Kenja「そうだな」

Gusha「なのに今日の俺は、昨日の俺から何も聞いてない」

Kenja「検索履歴は会話じゃないからな」

Gusha「じゃあ俺、ずっと独り言を検索欄に置いてるのか」

Kenja「そう考えると、ちょっと変だな」

Gusha「今度、検索欄に『元気ですか』って入れてみようかな」

Kenja「誰に向けてるんだよ」

Gusha「昨日の俺」

Kenja「返事は来ないぞ」

Gusha「分かってる」

Kenja「じゃあ、何で入れるんだよ」

Gusha「……候補に出てきたら、ちょっと話せそうじゃん」

Kenja「昨日のお前が?」

Gusha「うん」

Kenja「何を聞くんだよ」

Gusha「……卵、無事だったかって」

Kenja「そこだけは確認しとけ」

Gusha「……検索してみる」

Kenja「また履歴が増えるぞ」

Gusha「それも、明日の俺に任せる」

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