A cloth that talks to the wind, I still can't quite pronounce its name.

風と話す布、まだ名前はうまく言えない

Kenja the Sage と Gusha the Fool

Kenja「いや急にどうしたの、その手に持ってるやつ」

Gusha「これ?手ぬぐい。結論から言うと、全部これでいける」

Kenja「いや早いのよ結論が。しかも雑。“全部”って何。タオルでいいだろ別に」

Gusha「違うんだよ。昨日ね、なんとなく買ったの。柄がこう、波っぽくてさ」

A hand towel with a wave pattern is being unfolded.

Kenja「感覚でしか喋ってないな。で?」

Gusha「で、顔拭いたら…なんか、“分かる”のよ」

Kenja「何が?」

Gusha「水との距離感」

Kenja「分からん分からん。距離感って何。拭いてる時点でゼロだろ」

Gusha「タオルってさ、全部持っていくじゃん。水分を。“俺が全部やります”みたいな」

Kenja「まあ吸水力は高いけど」

Gusha「でも手ぬぐいは、ちょっと残すのよ。“あとは自分でどうぞ”って」

Kenja「いやそれ乾ききってないだけだろ」

Gusha「違うんだって。その“ちょい残し”が、なんか…生きてる感じ?」

Kenja「急に哲学ぶっこんでくるな。濡れてるだけだって」

Gusha「でもさ、そのあと風が当たると、スーって乾くのよ」

<画像>(洗った手ぬぐいが風に揺れて乾いている様子)

Kenja「それはどの布でも乾くわ」

Gusha「いやでも早いのよ。軽いから。で、またすぐ使える」

Kenja「ああ、乾きやすいっていう実用面ね。それは分かる」

Gusha「でしょ?あと、巻ける」

Kenja「まあ細長いからね」

Gusha「頭にも巻けるし、首にもいけるし、なんならおにぎりも包める」

Kenja「用途が広いのは認めるけど、急に生活感すごいな」

Gusha「でね、この前ちょっと暑くてさ、首に巻いて歩いてたのよ」

A refreshing summer figure walking with a hand towel around their neck.

Kenja「うん」

Gusha「そしたらなんか、“ちゃんとしてる人”みたいに見えた」

Kenja「どこがだよ。むしろ夏の対策してる人だろ」

Gusha「いや、なんか余裕ある感じ。“分かってる人”感」

Kenja「自己評価が高いな。たぶん誰もそこまで見てない」

Gusha「でもさ、汗も拭けるし、そのまま手も拭けるし、最悪ちょっとした旗にもなる」

Kenja「旗にはならんだろ用途として」

Gusha「応援できるじゃん、“がんばれー”って」

Kenja「状況限定すぎるだろ」

Gusha「あとね、干してるときがいいのよ」

Kenja「干してるとき?」

Gusha「風でひらひらしてさ、“あ、暮らしてるな”ってなる」

A scene of a hand towel fluttering on a balcony.

Kenja「それはまあ、分からなくもないけど…手ぬぐいに限らずじゃない?」

Gusha「いや、タオルだとこう、ドンってしてるじゃん」

Kenja「ドン?」

Gusha「厚みが。“私はここにいます”って主張が強い」

Kenja「擬人化やめろ」

Gusha「手ぬぐいは、“いま風と話してます”みたいな」

Kenja「いやちょっと分かりかけてる自分が怖いな」

Gusha「でしょ?」

Kenja「いや、でしょじゃないけど…確かに軽くて扱いやすいのはいいよね。かさばらないし」

Gusha「そうなのよ。カバンに一枚入れておくと安心感ある」

Kenja「そこはまあ実用的だな」

Gusha「しかも、洗ってもすぐ乾くから、なんか“回ってる”感じする」

Kenja「生活が?」

Gusha「そう。“ちゃんと回せてる俺”みたいな」

Kenja「結局そこかよ。自己肯定感の話じゃねえか」

Gusha「でもさ、それ大事じゃない?」

Kenja「まあ…否定はしないけど」

Gusha「タオルだとさ、ちょっと重たいのよ、気持ちが」

Kenja「布に感情預けすぎだろ」

Gusha「手ぬぐいは軽いから、気持ちも軽くなる」

Kenja「…いや、理屈は分からんけど、言いたいことはなんとなく分かる気がしてきた」

Gusha「ほら」

Kenja「でも“全部これでいける”は言い過ぎだろ。風呂上がりとか無理だぞ絶対」

Gusha「いや、いける。気合いで」

Kenja「それは手ぬぐいの性能じゃない」

Gusha「でもその“ちょっと足りない感じ”がさ、なんかいいのよ」

Kenja「…あー、完璧じゃないところがいい、みたいな?」

Gusha「そうそう。“あとちょっとは自分でどうにかしな”って言われてる感じ」

Kenja「急に人生の話みたいになるな」

Gusha「でも、なんか惹かれるでしょ?」

Kenja「……まあ、ちょっとだけな」

Gusha「でしょ?」

Kenja「いやでも買うかって言われたらまだ分からんけどな」

Gusha「一枚でいいから」

Kenja「その営業トークやめろ」

Gusha「波のやつ、おすすめ」

Kenja「柄の情報いらんのよ今」

Gusha「風と話せるから」

Kenja「そこが一番信用できないんだよ……でも、ちょっと見てみてもいいかもな」

Gusha「ほら来た」

Kenja「いや“完全に理解した”わけじゃないからな?」

Gusha「うん、そのぐらいがいい」

Kenja「なんでだよ」

Gusha「全部分かっちゃうと、ひらひらしないから」

Kenja「最後までふわっとしてんなお前!」

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