検索欄は、私より先に知っている
Gusha「検索ってさ、最近ちょっとせっかちすぎない?」
Kenja「急にどうした」
Gusha「まだ半分しか打ってないのに『これ探してるんでしょ?』って出してくるじゃん」
Kenja「検索候補のことだね。入力履歴や多くの人の検索から予測してる」
Gusha「予測っていうか、先回りだよ。会話でそれやったら結構うっとうしいぞ」
Kenja「確かに現実ならそうかもしれない」
Gusha「『今日さあ』って言った瞬間に『疲れたんでしょ』『ラーメン食べたいんでしょ』『仕事辞めたいんでしょ』って言われる感じ」
Kenja「極端だな」
Gusha「検索欄だけ許されてる」
Kenja「便利だからね。全部打たなくても目的地に着ける」
Gusha「でもさ、たまに違う方向へ行きたい日もあるじゃん」
Kenja「候補を無視すればいい」
Gusha「無視できるけど、見ちゃうんだよ。見た瞬間、『あ、これでいいか』ってなる」
Kenja「それはあるかもしれない」
Gusha「考える前に答えっぽいものが並ぶの、不思議じゃない?」
Kenja「昔は最後まで入力して、それから探していた」
Gusha「今は考えながら入力してる途中で、『その続き知ってます』って言われる」
Kenja「検索の時間そのものが短くなった」
Gusha「便利になった代わりに、『何を知りたかったんだっけ』って考える時間も短くなった気がする」
Kenja「検索って、答えを探す行為だと思っていたけど、質問を育てる時間でもあったのか」
Gusha「そうそう。途中で寄り道して、『いや違う、こっちだ』って戻る時間」
Kenja「今は一直線になりやすい」
Gusha「一本道って速いけど、店は減るよね」
Kenja「何の話だ」
Gusha「検索の中の商店街」
Kenja「また始まった」
Gusha「知らない店に入る前に、チェーン店が見えて安心しちゃう感じ」
Kenja「候補は安心をくれる。でも安心ばかり選ぶと、自分で探す機会は減るかもしれない」

Gusha「だから最近、たまに候補を見ないように打ち切る遊びをしてる」
Kenja「そんな遊びあるのか」
Gusha「最後まで自分で文章を完成させるだけ」
Kenja「それだけ?」
Gusha「それだけ。でも、自分が何を聞きたかったのか、最後まで責任持てる感じがする」
Kenja「便利さって、考えなくていい仕組みを増やしてきた。でも、少しくらい遠回りする自由まで手放す必要はないのかもしれない」
Gusha「検索欄には急がせてもらって、自分の頭だけは急がせない。それくらいがちょうどいい」
Kenja「次に検索するときは、候補が出ても一呼吸置いてみるか」
Gusha「検索欄も『あれ、今日は最後まで打つ人だ』って驚くかもね」