検索欄、俺より俺の過去を覚えてる
スマホで何かを検索しようとすると、まだ文字を入力していないのに過去の検索候補が出てくる。便利な機能のはずなのに、そこに並ぶ言葉を見ていると「俺、こんなこと調べたっけ?」という妙な気持ちになる。検索欄に残る過去と、忘れていた自分の行動をめぐって、話は思わぬ方向へ進んでいく。
スマホで何かを検索しようとすると、まだ文字を入力していないのに過去の検索候補が出てくる。便利な機能のはずなのに、そこに並ぶ言葉を見ていると「俺、こんなこと調べたっけ?」という妙な気持ちになる。検索欄に残る過去と、忘れていた自分の行動をめぐって、話は思わぬ方向へ進んでいく。
スマホを見ると、アプリの右上に赤い数字が並んでいる。たった一件なのに妙に気になる通知、消したはずなのにまた現れる数字、開くまで何なのか分からない赤丸。必要な情報を知らせているだけのはずなのに、いつの間にか数字そのものに追い立てられているような感覚が生まれてくる。
テレビのリモコンを眺めていると、毎日押すボタンと、一度も触った記憶のないボタンが同居していることに気づく。電源、音量、チャンネルの陰で眠る「入力切換」や「字幕」には、それぞれ役割があるはずなのに、なぜか使う側との距離が遠い。家電量販店の展示テレビを前に、使われないボタンの存在理由を考え始めると、リモコンそのものの見え方まで少し変わってきて……
カラオケの選曲履歴には、前にこの部屋を使った人が残した曲が並んでいる。たった数曲なのに、なぜか性格やその日の気分まで想像できてしまう。履歴を見るだけだったはずが、次第に「この人は何を考えていたのか」という妙な推理が始まっていく。
車内に並ぶ「iPhone」「AirPods」「KENJAのスマホ」……。ただ接続するだけのはずなのに、機器の名前には妙な個性がにじんでいる。名前を付ける側と、名前を見られる側。その境目を考え始めると、Bluetoothの一覧が少し違って見えてくる。
飛行機に乗らない日にも、スマホには「機内モード」がある。名前だけを信じれば出番の少ない機能なのに、実際には電波から少し離れたいときにも使えるらしい。では、機内モードにしたスマホは、いったい何から逃げているのか。名前と役割の微妙なズレを追いかけるうち、スマホとの距離まで少し変わってくる。
スマートフォンに話しかけるときだけ、なぜか妙に礼儀正しくなる。機械なのだから気にする必要はないはずなのに、「お願いします」「ありがとうございます」と言ってしまう。その不思議な距離感をきっかけに、便利な道具との付き合い方が少しずつ変に見えてきて……
セルフレジでも有人レジでも、最後にもらうレシート。あの紙には「ありがとうございました」と書いてある。でも、あれは誰が言っているんだろう。レシートの立場を真剣に考え始めた。
セルフレジは便利なのに、なぜか毎回こちらの人間性を試してくる気がする。バーコードを探し、袋詰めに焦り、謎の警告音に追われる時間。その不思議な緊張感。
レシピを保存するほど料理は上達するのに、保存したレシピはほとんど作られない。料理を始める前に満足してしまう不思議と、それでも紙のレシピや一冊の料理本が残り続ける理由。