ティッシュ箱の最後の一枚
Gusha「俺、ティッシュの最後の一枚だけ人格があると思う」
Kenja「いきなり何を言い出すんだ」
Gusha「絶対『まだ働きたくない』って箱の中で踏ん張ってる」
Kenja「踏ん張ってるんじゃない。残り一枚になると支える枚数がないから取りにくいだけだ」
Gusha「いや違う。俺が引っぱると毎回ちぎれる」
Kenja「力加減の問題だろ?」
Gusha「しかも次の箱を用意してる時に限って抵抗する」
Kenja「それはタイミングの問題だ」
Gusha「最後だから目立ちたいんだよ」
Kenja「ティッシュ業界にセンター争いはない」
Gusha「一枚目は『よろしくお願いします』って出てくるじゃん」
Kenja「そんな挨拶はしてない」
Gusha「真ん中は仕事人」
Kenja「まあ淡々とはしてるな」
Gusha「最後だけ『俺を抜いたら終わるぞ?』って圧をかけてくる」
Kenja「終わるのは事実だからな」
Gusha「最後の一枚って、物のラスボス感ある」
Kenja「ラスボスにしては弱すぎる」
Gusha「でも一番苦戦する」
Kenja「それは認める」
Gusha「昔、鼻水が止まらない日に最後の一枚だったことある」
Kenja「最悪のタイミングだな」
Gusha「急いで引っぱったら半分だけちぎれた」
Kenja「あるあるだ」
Gusha「残った半分が箱の穴から『続きは自分でどうぞ』みたいな顔してた」
Kenja「顔はない」
Gusha「俺、指を突っ込んで救出した」
Kenja「それを世界では取り出したと言う」
Gusha「でも途中で箱の中へ落ちた」
Kenja「一番やってはいけないやつだ」
Gusha「俺、その瞬間だけ考古学者になった」
Kenja「発掘調査みたいに言うな」
Gusha「指が入らないから箱を逆さにして振った」
Kenja「みっともない音がするんだよな」
Gusha「パタ…パタ…って」
Kenja「新品の箱では絶対聞かない音だ」
Gusha「最後の一枚って軽いのに存在感だけ重い」
Kenja「そこは少し面白い表現だな」
Gusha「昔から思ってたけど、箱って最後まで面倒見てくれない」
Kenja「箱は容器だから」
Gusha「九十九枚までは優しいのに」
Kenja「百枚入り前提で話すな」
Gusha「最後だけ『ここからは自己責任です』になる」
Kenja「説明書みたいに言うな」
Gusha「コンビニで新しい箱を買ってきても、最後の一枚だけは前の箱に残ることあるじゃん」
Kenja「あるな。新旧交代の空気になる」
Gusha「新入りが横で待ってる」
Kenja「新品なのに出番待ち」
Gusha「最後の一枚がベテラン俳優」
Kenja「急に芸歴が生えた」
Gusha「『まだ俺の芝居は終わってねえ』」
Kenja「ティッシュ一枚に熱量を持たせるな」

Kenja「映像で見ると余計に必死だな」
Gusha「俺さ」
Kenja「なんだ」
Gusha「最後の一枚がちゃんと取れた日は、ちょっと嬉しい」
Kenja「わかる気はする」
Gusha「勝った感じがする」
Kenja「相手は紙一枚なんだけどな」
Gusha「でも負ける日もある」
Kenja「あるな」
Gusha「結局、新しい箱を開ける時より、最後の一枚が無事だった時の方が記憶に残る」
Kenja「終わり方って、不思議と印象に残るものだからな」
Gusha「だから今日も、どこかで最後の一枚が抵抗してる」
Kenja「その一枚は、たぶん何も考えてないけどな」