When there’s only one rubber band left, it suddenly starts acting high and mighty.

輪ゴムは、最後の一本になると急に偉そうになる

Gusha「俺、最後の一本の輪ゴムだけは使えないんだよ」

Kenja「何を言ってるんだ。輪ゴムは使うためにあるだろ」

Gusha「いや、最後の一本になると急に重みが出る」

Kenja「重みじゃなくて在庫切れだ」

Gusha「さっきまで百本いたのに、最後だけ王様みたいになる」

Kenja「輪ゴム王国だったのか」

Gusha「『私を使うということは、完全終了ですよ?』みたいな顔してる」

Kenja「顔は描いてない」

Gusha「だから新しい袋を開ける」

Kenja「最後を残すために?」

Gusha「うん。最後の一本は永久に最後でいてもらう」

Kenja「永久に最後なら最後じゃないだろ」

Gusha「でも安心するんだよ」

Kenja「その心理は少し分かる。非常食を食べるタイミングに近いかもしれないな」

Gusha「非常輪ゴム」

Kenja「災害時に何を束ねる気だ」

Gusha「心」

Kenja「束ねられない」

Gusha「引き出し開けるとさ、クリップもホチキスの芯もあるのに、輪ゴムだけ特別扱いなんだよ」

Kenja「確かに輪ゴムは補充を忘れやすい」

Gusha「しかもスーパーでもらったやつだから、それぞれ出身が違う」

Kenja「出身?」

Gusha「ブロッコリー担当とか、ネギ担当とか」

Kenja「野菜売り場の経歴を背負ってるのか」

Gusha「八百屋育ちのエリート」

Kenja「履歴書を書かせるな」

Gusha「だから最後まで生き残るやつは強い」

Kenja「単純に使われなかっただけだ」

Gusha「いや、生存能力だ」

Kenja「輪ゴム版サバイバル番組じゃない」

Gusha「俺の家の最後の一本、たぶん四年くらい生きてる」

Kenja「2010年代からいる輪ゴムも珍しくないかもしれないな」

Gusha「長老だ」

Kenja「ただ劣化して切れるぞ」

Gusha「そこで急に現実を言うなよ」

Kenja「輪ゴムは天然ゴムでも合成ゴムでも時間で傷む」

Gusha「長老、寿命だったのか」

Kenja「最後まで残した結果、一番使えなくなる可能性がある」

Gusha「かわいそう!」

Kenja「いや、お前が使わなかったからだ」

Gusha「俺、急に謝りたくなってきた」

Kenja「誰にだ?」

Gusha「輪ゴムに」

Kenja「謝罪会見を開くな」

Gusha「『長年待機していただき、ありがとうございました』」

Kenja「退職式みたいになってる」

Gusha「でも最後の一本って、何でもそうじゃね?」

Kenja「例えば?」

Gusha「ティッシュ一箱の最後の一枚」

Kenja「あれは普通に取る」

Gusha「ポテトチップス最後の一枚」

Kenja「それも食べる」

Gusha「冷蔵庫のプリン最後の一個」

Kenja「それは家族構成による」

Gusha「あっ、それだけ急に政治になる」

Kenja「家庭内外交だからな」

Gusha「輪ゴムだけは誰とも争わないのに」

Kenja「誰も欲しがらないからだ」

Gusha「なのに俺だけ守ってる」

Kenja「守護対象がおかしい」

Gusha「この前、輪ゴム一本をしまうために空き箱一個残した」

Kenja「保管コストが高すぎる」

Gusha「しかも箱の中で一本だけ寝てる」

Kenja「VIP待遇だな」

Gusha「たまに見に行く」

Kenja「飼ってるみたいに言うな」

Gusha「元気そうだった」

Kenja「輪ゴムに体調はない」

Gusha「でも安心した」

Kenja「それは輪ゴムがある安心じゃなくて、予備がある安心なんだろう?」

Gusha「じゃあ一本じゃなくて、安心を保管してたのか」

Kenja「そう考えると少し話は変わるな」

Gusha「安心って輪っかなんだな」

Kenja「急にうまいことを言おうとするな」

Gusha「輪ゴムだから輪だし」

Kenja「そこは認める」

Gusha「……でも帰ったら使うわ」

Kenja「最後の一本を?」

Gusha「いや、たぶんまた新しい袋を開ける」

Kenja「結局、その長老は今日も引き出しの奥で静かに暮らしてるんだろうな」

When you open the drawer of the wooden desk, amidst the paperclips and pens, you find a single brown rubber band carefully placed inside a small, transparent box. It is a comical scene: surrounded by ordinary stationery, that one rubber band looks strangely majestic.

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