機内モードは飛行機専用なのか
Gusha「機内モードって、飛行機に乗らない日は休んでるんだろ?」
Kenja「いや、機能に休日はない。そもそも飛行機専用でもない」
Gusha「でも名前が『機内』だぞ。俺が家で押したら、スマホの中だけ成田空港になるんじゃないの?」
Kenja「ならない。電波通信を止めるためのモードだ」
Gusha「じゃあ『電波お断りモード』でいいじゃん」
Kenja「それだと急に玄関の張り紙みたいになるな」
Gusha「『本日は電波を受け付けておりません』」
Kenja「旅館の休業案内じゃないんだから」
Gusha「でも便利だよな。俺、飛行機に乗らない日でも機内モードにしたくなる」
Kenja「どういうときだ?」
Gusha「誰とも連絡したくないとき」
Kenja「それは機内モードの使い方としては分かる。ただ、機内モードにしてもスマホそのものは使える」
Gusha「え、じゃあ逃げ切れてないじゃん」
Kenja「何から逃げたいんだ?」
Gusha「通知」
Kenja「通知だけなら通知設定を変えればいい」
Gusha「電話」
Kenja「着信を避けたいなら、それも別の方法がある」
Gusha「人間」
Kenja「それはスマホの設定では解決しない」
Gusha「そこを一番止めたいんだけどな」
Kenja「スマホの電源を切れ」
Gusha「急に物理的だな」
Kenja「デジタルの問題を全部デジタル設定で解決する必要はない」
Gusha「でも機内モードって、ちょっと特別扱いされてる感じがするんだよ。押した瞬間、『今から俺は外界と距離を取ります』って宣言してる」
Kenja「実際には通信機能を制限するための設定だ。AppleのiPhoneでもAndroidでも、似た機能がある」
Gusha「Appleって言われると急にちゃんとしてるな」
Kenja「名前が立派になるわけじゃない」
Gusha「じゃあ飛行機の中で機内モードにしたあと、暇だから写真を見るのはいいんだ?」
Kenja「もちろん。保存されている写真や一部のアプリは使える」
Gusha「じゃあ機内って、けっこう自由なんだな」
Kenja「飛行機の中で何でも自由という意味ではない」
Gusha「俺だったら機内モードにして、空港の待合席でずっとスマホ触るけど」
Kenja「それはただの待ち時間だ」
Gusha「でも外との通信を切ってるから、精神的には飛行機の中だろ」
Kenja「その理屈なら、Wi-Fiを切った部屋は全部機内になるぞ」
Gusha「じゃあ俺の風呂も機内だな」
Kenja「湯船にスマホを持ち込むな」
Gusha「機長、厳しいな」
Kenja「俺は機長じゃない」
Gusha「でも機内モードって、考えてみると面白いよな。飛行機に乗ってないのに、わざわざ『機内』になる」
Kenja「言葉だけ見ると確かに不思議だ」
Gusha「これ、ほかの機能もそういう名前にしたらいいんじゃない?」
Kenja「例えば?」
Gusha「スクリーンタイムを『ちょっと使いすぎた時間』」
Kenja「長い」
Gusha「低電力モードを『もうちょっと頑張ってください』」
Kenja「懇願になってる」
Gusha「おやすみモードを『今日は誰も悪くない』」
Kenja「それは設定じゃなくて人間関係の処理だな」

Gusha「じゃあ逆にさ、飛行機に乗ってるのに機内モードにしなかったら、スマホだけ地上にいるの?」
Kenja「意味が分からない」
Gusha「俺たちは空を飛んでる。でもスマホは電波を探してる。心は地上に置いてきたんだ」
Kenja「急に詩人になるな」
Gusha「スマホだけ、まだ帰りの電車を待ってる」
Kenja「そこまで考えなくていい」
Gusha「だから機内モードなんだよ。スマホにも『今はここにいよう』って言ってやるんだ」
Kenja「……設定の話だったはずなんだけどな」
Gusha「でも、そう考えると押したくならない?」
Kenja「俺は今までより少しだけ、機内モードの名前が気になってきた」
Gusha「ほら。もう搭乗してる」
Kenja「何にだよ」
Gusha「知らない。電波じゃない何かに」