風呂で最初に洗う場所
Gusha「俺、風呂で最初に洗う場所って、たぶん今日の気分が決めてる」
Kenja「いや、気分でそんなところ変わるか?」
Gusha「変わるよ。元気な日は頭。疲れてる日は肩。何もしたくない日は、シャワーを持ってる手」
Kenja「手は洗う場所じゃなくて、シャワーを持つ場所だろ」
Gusha「でも昨日の俺、手から始まったぞ」
Kenja「それはシャワーを浴びてるんだから、最初から濡れてるだけだ」
Gusha「じゃあ、俺の風呂には最初の一歩から哲学があるってことか」
Kenja「そんな大げさな話じゃない。単なる順番だよ」
Gusha「でもおかしくない?風呂って毎日同じことしてるのに、誰も『今日は右肩から洗おう』とか決めてない」
Kenja「決めてないからこそ、いつもの順番になるんだろ。歯磨きだって、右上からやる人もいれば左からやる人もいる」
Gusha「俺は歯磨き、たまに歯ブラシを口に入れてから何も考えなくなる」
Kenja「それは順番以前の問題だ」

Gusha「でも風呂って、最初にどこを洗うかで、その日の自分がちょっと見える気がする」
Kenja「例えば?」
Gusha「頭から行く人は、ちゃんとしてる。顔から行く人は、見た目を気にしてる。足から行く人は、地面との関係を大事にしてる」
Kenja「最後だけ急に思想家になったな」
Gusha「あと、お腹から行く人は腹をくくってる」
Kenja「ただお腹を洗ってるだけだ」
Gusha「じゃあKenjaはどこから?」
Kenja「左肩」
Gusha「めちゃくちゃ具体的だな」
Kenja「シャワーを右手で持つから、左肩が当てやすい。それだけ」
Gusha「ほら、やっぱり理由あるじゃん」
Kenja「理由があるというより、体の使い方の結果だよ」
Gusha「じゃあ俺が肩から洗ってるのも、実は体が勝手に選んでる?」
Kenja「そうかもしれない。人間は毎回すべてを判断してるわけじゃないからな」
Gusha「じゃあ風呂場って、俺の知らない俺がいっぱい住んでるのか」
Kenja「言い方が怖い」
Gusha「今日の俺は左肩担当、昨日の俺は右足担当みたいな」
Kenja「交代制の部署みたいに言うな」
Gusha「しかも風呂場の中で一番権限が強いのがシャンプー」
Kenja「なんでだよ」
Gusha「泡を出せるから」
Kenja「権限の基準が泡なのか」
Gusha「ボディソープはポンプを押されるだけ。シャンプーは頭を全部支配する」
Kenja「支配というほどでもない」
Gusha「リンスはさらに謎だぞ。最後のほうに出てきて、何もせず髪に残ってる時間だけ長い」
Kenja「それは浸透させてるんだろ」
Gusha「風呂場の中で一番『待ってればいい』を実践してる」
Kenja「お前、また変な見方を始めたな」
Gusha「でもさ、毎日同じ順番で洗ってると思ってたのに、意外と一日ごとに違うんだよ」
Kenja「本当に?」
Gusha「昨日は肩、今日は腕、その前はたぶん首」
Kenja「たぶん?」
Gusha「風呂の記憶って、すごく曖昧なんだよ」
Kenja「確かに。2026年8月12日に何から洗ったか聞かれても、普通は覚えてないな」
Gusha「でも体は覚えてる」
Kenja「何を?」
Gusha「風呂場に入ったら、勝手にいつもの場所へシャワーを向ける」
Kenja「それは習慣だろうな」
Gusha「習慣って、本人より先に動くんだな」
Kenja「そういうことはある」
Gusha「じゃあ俺、風呂に入るたびに、ちょっとだけ自分に任せてるんだ」
Kenja「まあ、そう考えると悪くないな」
Gusha「明日から最初に洗う場所を決めてみようかな」
Kenja「急に?」
Gusha「明日は耳」
Kenja「そこから始めるのは難しいだろ」
Gusha「じゃあ足」
Kenja「今度は床にシャワーが当たる」
Gusha「じゃあ、明日の俺に任せる」
Kenja「結局それが一番いつも通りかもしれないな」
Gusha「……明日の俺、どこから洗うんだろ」
Kenja「たぶん、もう決めてるよ」
Gusha「俺より先に?」
Kenja「たぶん」
Gusha「じゃあ、ちょっと楽しみだな」
Kenja「風呂なのに?」
Gusha「風呂だからだよ」