信号待ちは誰の時間なんだ
Gusha「俺さ、赤信号ってもっと有効活用できると思うんだ」
Kenja「急に社会改革を始めたな」
Gusha「横断歩道の前に電子レンジ置こう」
Kenja「事故の未来しか見えない」
Gusha「信号待ち三十秒でお弁当あったまる」
Kenja「その三十秒、そんな目的で作られてない」
Gusha「もったいないじゃん。みんな棒立ちだぞ」
Kenja「棒立ちじゃない人もいる。スマホ見たり、周り見たり、信号見たり」
Gusha「俺は毎回『あと何秒だ』って数字探す」
Kenja「最近はカウントダウン表示のある横断歩道も増えたな」
Gusha「数字があると安心する」
Kenja「ないと?」
Gusha「永遠かもしれない」
Kenja「そこまで悲観するか」
Gusha「赤信号ってさ、誰も説明してくれないじゃん。『待ってね』しか言わない」
Kenja「信号機は無口だからな」
Gusha「せめて『あと二十二秒で青になります。今日もありがとうございます』とか言ってほしい」
Kenja「駅のアナウンスじゃないんだから」
Gusha「『本日は少々長めにお待ちいただきます』でもいい」
Kenja「信号待ちにクレーム窓口ができそうだ」
Gusha「あと、待ってる人の空気あるよな」
Kenja「あるな」
Gusha「一人だけフライングしそうな人」
Kenja「いる」
Gusha「絶対渡らないって決めてる人」
Kenja「いる」
Gusha「みんなが渡るまで後ろで様子見してる人」
Kenja「いる」
Gusha「俺は先頭に立つの緊張する」
Kenja「意外だな」
Gusha「間違えて青じゃなかったら責任感じる」
Kenja「誰も君を隊長だとは思ってない」
Gusha「でも先頭ってプレッシャーあるぞ」
Kenja「まあ、一歩目は少し早い人がいるな」
Gusha「俺、後ろに十人くらいいると『俺について来い!』みたいな気分になる」
Kenja「勝手にリーダーになるな」
Gusha「渡り終わると解散」
Kenja「期間限定のチームだな」
Gusha「一期一会」
Kenja「横断歩道だけの友情」
Gusha「名前も知らない」
Kenja「知る必要もない」
Gusha「でも歩く速さだけは知ってる」
Kenja「確かに」
Gusha「めちゃくちゃ速い人いるじゃん」
Kenja「青信号を百メートル走だと思ってる人な」
Gusha「逆に、散歩みたいな速度の人もいる」
Kenja「急いでる人は後ろで進路変更してる」
Gusha「横断歩道って小さい人生だな」
Kenja「話が急に壮大になった」
Gusha「全員、目的地が違うのに一瞬だけ同じ方向へ進む」
Kenja「言われると不思議だ」
Gusha「なのに渡り終わった瞬間、二度と会わない感じになる」
Kenja「たまに同じ方向へ歩くけどな」
Gusha「それ気まずい」
Kenja「分かる」
Gusha「『まだ一緒だ』って思う」
Kenja「信号で解散したはずなのにな」
Gusha「コンビニまで同じだと、ちょっと運命を感じる」
Kenja「感じるな」
Gusha「さらに同じ飲み物を取ったら結婚」
Kenja「飛躍しすぎだ」
Gusha「お互い麦茶」
Kenja「麦茶だけで人生決めるな」

Gusha「あとさ、信号待ちって暇だから変なこと考えない?」
Kenja「例えば?」
Gusha「白線だけ踏んで渡ろうかなとか」
Kenja「子どもの頃やった」
Gusha「影から落ちないゲームとか」
Kenja「太陽の位置で難易度が変わるやつ」
Gusha「向こう側へ着いたら今日いい日になる気がするとか」
Kenja「信号一つで運勢を決めるな」
Gusha「待ってる間だけ世界がちょっと止まる感じが好きなんだよ」
Kenja「車は止まってるし、人も止まってるからな」
Gusha「街全体が一回深呼吸してるみたい」
Kenja「それは少し分かる」
Gusha「青になった瞬間、『はい再開!』って感じ」
Kenja「ゲームの一時停止が解除されるみたいだ」
Gusha「だから赤信号って休憩なんだよ」
Kenja「急いでる人には違うかもしれないけどな」
Gusha「じゃあ俺は休憩派でいく」
Kenja「電子レンジは?」
Gusha「それはまだ諦めてない」
Kenja「信号待ちのたびに弁当を持ち歩く気か」
Gusha「赤が長い交差点だけ狙う」
Kenja「その情熱だけは青信号より速そうだ」
境目だけが覚えている シリーズ
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