歯ブラシを持っただけの日
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Gusha「昨日さ、『靴を履くだけ』試したんだよ」
Kenja「お、ちゃんとやったんだ」
Gusha「履いた」
Kenja「歩いた?」
Gusha「いや、履いたあと冷蔵庫開けた」
Kenja「何してんだよ」
Gusha「でも不思議なんだよな。前だったら“今日はやれなかった”って感じだったのに、“一応やった”って感覚が残った」
Kenja「まあ、ゼロではないからね」
Gusha「で、そのあとなんとなく外出た」
Kenja「歩いたんじゃん」
Gusha「コンビニまで3分」
Kenja「十分だよ」
Gusha「でもさ、俺ちょっと悔しかったんだよな。“3分だけかよ俺”って」
Kenja「また完璧主義出てる」
Gusha「いや違う。人って“始めたら変わる自分”を期待してるじゃん。なのに俺、3分歩いて普通にアイス買って帰ってきたから」
Kenja「急に人生変わるわけないだろ」
Gusha「でも、その普通さが変だったんだよ」
Kenja「どういうこと?」
Gusha「今までって、“やるか、やらないか”だったの。0か100。でも昨日、“3”くらいの日があった」
Kenja「点数きざむな」
Gusha「しかも3なのに、なんか終わってなかった」
Kenja「……」
Gusha「俺ずっと、“失敗したら終了”だと思ってたんだよな。ダイエットでも勉強でも。“今日はできませんでした”の時点でタイトル回収みたいな」
Kenja「最終回みたいに言うな」
Gusha「でも実際は、“昨日の続き”なんだな。なんかゲームのセーブデータみたいだった」
Kenja「まあ、習慣って本来そういう積み重ねだからね」

Gusha「あとさ、“歯ブラシ持つだけ”も試した」
Kenja「お前、どこまで縮小するんだよ」
Gusha「いや、夜めんどくさくて。でも持ったらそのまま磨いた」
Kenja「自然な流れだな」
Gusha「ただ、そのあと10分スマホ見た」
Kenja「プラマイゼロみたいに言うな」
Gusha「でも昔だったら、“スマホ見ちゃった…”で全部ダメ判定だったんだよ」
Kenja「それが極端なんだって」
Gusha「人間さ、“1個崩れたら全部崩れたことにする機能”ついてない?」
Kenja「あるな…。たぶん脳の仕様」
Gusha「カレーこぼしただけで、“今日はもう終わりだ…”ってなる感じ」
Kenja「その規模なら落ち込め」
Gusha「でも最近ちょっと思うんだよ。“続ける”って、強い人しか無理だと思ってたけど」
Kenja「うん」
Gusha「実際は、“忘れても戻ってくる人”のほうが続いてるんじゃないか?」
Kenja「……それは、あるかもしれない」
Gusha「だって毎日完璧な人、なんか怖いもん」
Kenja「偏見だよ」
Gusha「いや、“今日ちょっとサボっちゃってさ”って言う人のほうが信用できる」
Kenja「その感覚、分からなくはないな」
Gusha「あら?」
Kenja「柔軟になっただけ」
Gusha「同じだよ。ラーメンのチャーシューだって最終的には崩れるんだから」
Kenja「急に煮込み料理の話するな」
Gusha「でもさ、俺ちょっと安心したんだよ。“続かなかった自分”じゃなくて、“戻ってこれる自分”かもしれないって」
Kenja「……その考え方は、悪くないな」
Gusha「でしょ? だから今日もやる」
Kenja「散歩?」
Gusha「とりあえず靴履く」
Kenja「まだ入口だな」
Gusha「入口があるだけ前進だろ」
Kenja「……まあ、それはそうか。結局、習慣は『完璧にやる』ものじゃなく、『続けられる自分を楽しむ』ものなんだから」
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