閉まる音だけで、今日が決まる気がする
Gusha「俺さ、玄関のドアが『ガチャ』って閉まる音で、その日の運勢わかる」
Kenja「急に占いを始めるな。玄関のドアは星座じゃない」
Gusha「いや、あるんだって。『ガチャ』って気持ちよく閉まる日は全部うまくいく」
Kenja「気分の問題じゃないの」
Gusha「違う。『ガチャ』じゃなくて『ガチャン!』の日は危ない」
Kenja「勢いよく閉めただけだろ」
Gusha「勢いには人生が出る」
Kenja「名言っぽく言っても意味は変わらない」
Gusha「冷蔵庫もそう」
Kenja「増えたな」
Gusha「ちゃんと閉まると安心するだろ」
Kenja「それは食材が傷まない安心だ」
Gusha「でも半開きだった時って、心がザワッとするじゃん」
Kenja「それは電気代と牛乳の心配だ」
Gusha「俺、一回さ。冷蔵庫を五回ぐらい閉め直したことある」
Kenja「確認しすぎ」
Gusha「最後だけ音が違った」
Kenja「気のせいだ」
Gusha「いや、『これだ』って音がある」
Kenja「パズルの最後の一ピースじゃないんだから」
Gusha「引き出しもある」
Kenja「今日は閉めるもの特集か」
Gusha「机の引き出しって、最後に『コト』って入る瞬間あるだろ」
Kenja「あるけど」
Gusha「あれがないと、一日終われない」
Kenja「会社員みたいなこと言うな」
Gusha「ペンだけしまって帰ろうとしても、『コト』が弱いと戻ってもう一回閉める」
Kenja「引き出しに厳しすぎる」
Gusha「音が『今日はここまで』って言ってくれる」
Kenja「なるほどな。区切りにはなってるのかもしれない」
Gusha「そうそう!」
Kenja「でも全部の音に意味を持たせるのは大変だぞ」
Gusha「自動販売機もそう」
Kenja「まだあるのか」
Gusha「商品が落ちる『ゴトン』」
Kenja「あれは楽しみな音だな」
Gusha「あれが『ゴト…』だったら不安」
Kenja「途中で止まった感じするな」
Gusha「俺、その瞬間だけ呼吸止める」
Kenja「無意識にな」
Gusha「ちゃんと出てくると『よし』って思う」
Kenja「1980年代から自販機はかなり進化してるけど、人間の反応は変わってないのかもな」
Gusha「あと車」
Kenja「免許持ってたっけ」
Gusha「助手席専門」
Kenja「専門って何だ」
Gusha「車のドアを閉める音で、高そうな車ってわかる」
Kenja「確かに重い音がする車はある」
Gusha「『バムッ』って閉まる」
Kenja「文字にするとすごいな」
Gusha「軽い音だと『パンッ』」
Kenja「擬音だけで車評論家をやるな」
Gusha「高級車は音まで高級」
Kenja「実際、音を調整してるメーカーもあるらしい」
Gusha「ほら!」
Kenja「だからって運勢ではない」

Gusha「そういえば、図書館のドアって静かだよな」
Kenja「閉まる音まで配慮されてるからな」
Gusha「あれだけ静かだと逆に緊張する」
Kenja「静かすぎる空間あるよな」
Gusha「俺、一回静かに閉めようとして、最後だけ『バン!』ってなった」
Kenja「あるあるだ」
Gusha「あの瞬間、全国の読書家に振り向かれた」
Kenja「全国じゃない。せいぜいその部屋だ」
Gusha「でも体感では全国」
Kenja「心の中でニュース速報になってる」
Gusha「『速報です。Gushaさん、図書館で派手にドアを閉めました』」
Kenja「アナウンサーまで出てくるな」
Gusha「解説者もいた」
Kenja「どんな解説だよ」
Gusha「『閉めたかった気持ちは理解できます』」
Kenja「誰もフォローしてくれないだろ」
Gusha「でもさ」
Kenja「うん」
Gusha「開く音って、あんまり覚えてないんだよな」
Kenja「言われてみれば」
Gusha「閉まる音ばっかり残る」
Kenja「終わる音だからかもしれない」
Gusha「だから今日も玄関を閉める時だけ、ちょっと耳を澄ます」
Kenja「明日はどんな音になるんだろうな」
境目だけが覚えている シリーズ
- 境目だけが覚えている
- 店員さんの「少々お待ちください」は、どれくらい少々なのか
- 閉まる音だけで、今日が決まる気がする ← 今読んでる記事
- エレベーターの「閉」ボタンだけ、妙に信じられている
- 信号待ちは誰の時間なんだ
- 自動ドアのタイミング
← 前の記事:店員さんの「少々お待ちください」は、どれくらい少々なのか
次の記事:エレベーターの「閉」ボタンだけ、妙に信じられている →