トイレットペーパーの端は、なぜ三角になるのか
Gusha「トイレットペーパーって、使い終わった瞬間だけ礼儀正しくなるよな」
Kenja「いや、紙に礼儀は発生しないだろ」
Gusha「だって端っこ、三角になるじゃん。急に正装する」
Kenja「三角折りのことか。あれは清掃済みのサインとして使われることもあるけど、一般家庭で必須のマナーではないぞ」
Gusha「じゃあ俺、トイレ出るたびに紙をネクタイにしてたのか」
Kenja「ネクタイではない」
Gusha「三角だぞ。かなりフォーマルじゃん」
Kenja「形だけで礼装扱いするな」
Gusha「でも旅館とかホテルで三角になってると、ちょっと嬉しくない?」
Kenja「整っている感じはするな。ただ、清掃済みの印として折られている場合もあるから、次の人へのマナーと決めつけるのは違う」

Gusha「つまり『ここは清掃しました』っていう紙の名札か」
Kenja「まあ、そういう役割で使われることがある」
Gusha「じゃあ誰もいないトイレで、紙だけが『私は掃除されました』って自己紹介してるんだ」
Kenja「紙に自己紹介させるな」
Gusha「でも俺、三角になってると、ちょっとだけ丁寧に使いたくなる」
Kenja「それは人間側の心理だな」
Gusha「『前の人が三角にしたから、俺もちゃんとしよう』ってなる」
Kenja「そこに妙な連鎖はあるかもしれない」
Gusha「逆に、ぐしゃってなってたら?」
Kenja「普通に使うだろ」
Gusha「俺はちょっと怖い」
Kenja「何が怖いんだよ」
Gusha「紙が前任者の感情を引きずってる感じがする」
Kenja「トイレットペーパーに前任者の感情を背負わせるな」
Gusha「『今日は三角にする気力がありませんでした』って」
Kenja「紙から人生相談を始めるな」
Gusha「しかも三角って、折るの簡単そうで意外ときれいにいかないんだよ」
Kenja「確かに端をそろえる必要はあるな」
Gusha「一回失敗して、二回目でちょっとずれて、三回目で『もういいや』ってなる」
Kenja「それはお前が不器用なだけだ」
Gusha「だから俺、トイレットペーパーの三角折りには職人がいると思ってる」
Kenja「いない。少なくとも一般的にはそこまで専門職ではない」
Gusha「『三角折り歴12年』とか」
Kenja「履歴書に書くな」
Gusha「『得意な折り方、二等辺三角形』」
Kenja「就職面接で聞かれない」
Gusha「でも、三角になってると『次の人のために整えた』ようにも見えるだろ」
Kenja「そこが少しややこしい。親切に見える一方で、実際には触らないほうがいい場合もある」
Gusha「じゃあ、親切そうな顔をした紙が、一番信用できないのか」
Kenja「そこまで疑う必要はない」
Gusha「俺なら三角を見たら、一回距離を取る」
Kenja「トイレで紙から距離を取るな」
Gusha「それで2026年の今も、三角折りだけで『ちゃんとしてる感』が出るの面白いよな」
Kenja「確かに、たった一回折っただけで、妙に整然として見える」
Gusha「紙一枚なのに、角ができた瞬間に人格までできる」
Kenja「人格まではできてない」
Gusha「じゃあ、四角に折ったら?」
Kenja「何になるんだ」
Gusha「会社員」
Kenja「三角は礼儀、四角は会社員って何の分類だよ」
Gusha「丸めたら自由業」
Kenja「紙の職業診断をするな」
Gusha「ぐしゃぐしゃなら?」
Kenja「もういいだろ」
Gusha「無職」
Kenja「最後だけ急に厳しいな」
Gusha「でもさ、トイレを出る直前に端を三角にする人って、紙を使った最後に『次の人』を思い出してるんだよな」
Kenja「まあ、そう考えることはできる」
Gusha「俺、今まで紙の端なんて気にしてなかったけど」
Kenja「うん」
Gusha「明日から三角を見たら、ちょっとだけ挨拶したくなるかもしれない」
Kenja「誰に?」
Gusha「……三角に」
Kenja「そこは人にしろよ」
Gusha「でも、先に折ってあるんだぞ」
Kenja「……まあ、確かに妙にきれいではあるけどな」
Gusha「ほら、もう敬語使いそうになってる」
Kenja「使ってない」
Gusha「三角に」
Kenja「……使ってないって」