財布の中の小銭は、会議している
Gusha「俺、財布の中で毎晩会議が開かれてると思う」
Kenja「何の話だ。財布に役員でも住んでるのか」
Gusha「1円玉が『今日も増えました』って報告してる」
Kenja「怖い会社だな」
Gusha「10円玉はちょっと偉そう」
Kenja「金額だけ見ればそうかもしれないけど」
Gusha「100円玉は現場責任者」
Kenja「500円玉は?」
Gusha「出張中。自販機とかで消えるから」
Kenja「妙にリアルだな。最近はキャッシュレスが増えても、小銭は意外と残るんだよ」
Gusha「財布を開けるたびに、新入社員が入ってる」
Kenja「お釣りでもらってるだけだ」
Gusha「しかも1円玉は団体で来る」
Kenja「一人だと心細いからじゃない?」
Gusha「俺も『今日は一人で入社します』は見たことない」
Kenja「小銭に入社式はない」
Gusha「なのに出ていく時は一人なんだよ」
Kenja「レジで必要な枚数だけ使うからな」
Gusha「だから財布の中が『送別会ばっかり』なんだ」
Kenja「会議じゃなくなってる」
Gusha「財布って会社だったのか」
Kenja「会社じゃない」
Gusha「でも、たまにレジで『細かいのありますか』って聞かれるじゃん」
Kenja「あるな」
Gusha「俺、あれ完全に人事異動だと思ってる」
Kenja「店員さんは小銭を集めたいだけだ」
Gusha「『君は今日からレジ勤務だ』って」
Kenja「財布勤務なんて最初から存在しない」
Gusha「でも、財布の中を見てると迷うんだよ」
Kenja「何を」
Gusha「この5円玉、将来ある顔してる」
Kenja「顔で判断するな」
Gusha「これは残したい」
Kenja「何の期待だ」
Gusha「逆に50円玉は『俺、使われても平気っす』って顔」
Kenja「お前だけに見えてる世界だ」
Gusha「財布を開けるたびに面談してる」
Kenja「時間の無駄だ」
Gusha「『最近どう?』って」
Kenja「硬貨は返事しない」
Gusha「『だいぶ擦れてきました』って」
Kenja「返事してるじゃないか」
Gusha「たまに海外のコインも混じる」
Kenja「旅行のあとならあるな」
Gusha「転職してきた人だ」
Kenja「その会社、国境を越えるな」
Gusha「言葉通じないから静かなんだよ」
Kenja「コイン同士で会話してる前提がおかしい」

Gusha「財布ってさ、閉めると会議始まるよな」
Kenja「始まらない」
Gusha「『今日も誰も使われませんでした』」
Kenja「そんな日はあるけど」
Gusha「『では、明日も財布を重くしていきましょう』」
Kenja「会社の目標がおかしい」
Gusha「だから財布が膨らむ」
Kenja「単純に小銭が増えてるだけ」
Gusha「俺、レジで小銭を全部出そうとして失敗する」
Kenja「あるあるだな」
Gusha「店員さんより俺のほうが混乱してる」
Kenja「『8円ありますか』って言われて財布の中が迷路になる」
Gusha「その瞬間、小銭たちが隠れる」
Kenja「隠れない」
Gusha「100円玉が1円玉を後ろにかばう」
Kenja「戦場じゃない」
Gusha「『若い者は下がれ!』」
Kenja「誰も命を狙われてない」
Gusha「5円玉だけ縦になって様子見てる」
Kenja「器用すぎるだろ」
Gusha「財布閉じた瞬間に『助かった……』って」
Kenja「お前、本当に会議見えてるんだな」
Gusha「だから俺、財布を軽くしたい気持ちと、小銭たちを解散させたくない気持ちが半々なんだよ」
Kenja「情が移るな」
Gusha「気付いたら、またコンビニでお釣りもらって新人が入ってくる」
Kenja「永久採用だな」
Gusha「財布の中って、人より離職率低いよな」
Kenja「……その会社だけは、ずっと人手不足にならないのかもしれないな」
財布の中では今日も会議中 シリーズ
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